「森友問題」元総務課長の考察(2018/08/06)

架空小説「仮名手本森友学園」

森友問題では、様々な人物が登場する。

登場時に、注目を浴びながらも、その後、消えていった人物や、「森友問題の真相は○○だ」と自信満々に言いながら根拠を示さず「悪質なデマだ」と訴えられるとフェイドアウトしていった人物など、問題の解決に何ら貢献しない端役は、数多くいる。

だが、その一方で、端役に過ぎないと思っていた人物が、この問題の重要人物であることが明らかになり、予想外の結果に驚かされることもあった。

私にとって、最大の予想外だったのが、財務省理財局の元総務課長である。

この元総務課長は、登場時は、単なる国会議員やマスコミへの対応役だと見ていたが、実は、問題当初から関わっていて、改ざん行為の命令を下した実行犯であったことが分かった。

そしてまた、改ざんをした理由について、未だに詳しく語っていない人物でもありながら、処分明けの7/27の財務省人事で、新たな地位を与えられた人物でもある。

そんな、元総務課長について、森友問題とのこれまでのかかわりを整理してまとめ、考察を加えたい。

1.元総務課長関連の森友問題年表

2013/09/02 籠池→近畿財務局「土地取得要望書」提出
2014/07/09 人事異動「理財局国有財産企画課長」角田隆→中村稔
2015/02/04 特例承認の決済文書1(中村国有財産企画課課長 決済)
2015/04/30 特例承認の決済文書2(中村国有財産企画課課長 決済)
2015/05/28 貸付契約成立
2016/03/15 籠池夫妻→本省訪問(田村国有財産審理室長)
2016/06/17 人事異動「理財局総務課長」富山一成→中村稔
2016/06/20 売買契約成立
2016/06/22 人事異動「国有財産企画課長」中村稔→冨安泰一郎(注1)
2017/02/09 朝日新聞「価格非公表、近隣の1割か」
2017/02/17 安倍「かかわっていたら、国会議員も総理大臣も辞める」
2017/02/20 嶋田賢和国有財産企画課課長補佐→酒井弁護士「10日ほど隠れるように」
2017/02/21 国会議員団現地視察。田村国有財産審理室長も出張し同席「応接録は残されていない」
2017/02/22 菅官房長への説明(中江・菅・寺岡。佐川・太田・中村。平垣内・航空局総務課企画官)
2017/02/23 近畿財務局、応援の職員を呼び寄せた上で、政治家関係の記載箇所を確認作業
2017/02/24 佐川国会答弁「交渉記録というものはございませんでした」
2017/02/24 菅官房長「決裁文書にほとんどの部分は書かれているんじゃないでしょうか」
2017/02/26 日曜出勤して国有財産審理室長及び配下の職員が、国有財産企画課長に報告の上で決済文書改ざん作業。近畿財務局にも指示し、管財部次長及び統括国有財産管理官以下の職員が改ざん作業
2017/02/27 中村「今回の件は絶対大丈夫だから」(前田史郎朝日新聞論説委員の電話取材に)
2017/00/00 宮本岳志議員、田村室長・中村総務課長から聞き取り
2018/03/02 朝日新聞「決済文書書き換えか」
2018/03/02 中村「我々が決裁文書として持っているものは、情報開示請求などに出しているものだけだ」(朝日新聞記事)
2018/03/02 野党合同ヒアリング(中村総務課長出席「お答えできない」→この日以降姿を消す)
2018/04/11 中村に決済した文書の内容を確認「責任はありますが、正直に言うと、そこまでちゃんと見ていなかったので、覚えてませんでした」(太田理財局長の国会答弁)
2018/06/04 財務省改ざん報告書発表(中村は停職1ヶ月の懲戒処分。大臣官房付けに移動)
2018/06/04 人事異動「理財局総務課長」中村稔→井口裕之
2018/07/27 財務省人事異動(中村は大臣官房参事官に)

注)00は日時不明。敬称略。

(注1)中村氏は6/17から当日まで総務課長と国有財産企画課長を兼任。当日の人事移動で兼国有財産企画課長、兼理財局国有財産調整課、兼理財局国有財産業務課の肩書きも外れる)。

基本的な内容は、過去の考察のカテゴリー(「森友問題」考察)より。

人事異動については、
財務省ホームページ、 トップページ > 新着一覧。
https://www.mof.go.jp/whats_new/index.htm
より、発表があった日を、年度>月別と選択して、該当する日付の「人事異動」のPDFファイルを確認。
(参照2018-08-06)

個別の情報についての参考文献は

財務省 トップページ > 広報・報道 > 大臣談話・ステートメント > 大臣談話・スピーチ > 決裁文書の改ざん等に関する調査報告書について、”森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書(平成30年6月4日)(PDF:9269KB)”。
https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20180604chousahoukoku.pdf
(参照2018-08-06)

同上、>決裁文書に関する調査について。
https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/search_kessaibunsho.htm
ページ内の各ファイル
(参照2018-08-06)

ハーバー・ビジネス・オンライン、<取材・文/菅野完>、”政権の「佐川主犯」物語に終止符! 一年前のある発言から明らかになる「綻び」”、2018.03.18。
https://hbol.jp/162275
(参照2018-08-06)

大和民族の団結│日本人の誇りを取り戻せ、”森友「昭恵」決裁文書の内容を中村稔総務課長が知らなかったなどあり得ない”、二〇一八年四月一七日。
http://blog.livedoor.jp/yamatodanketsu/archives/25761473.html
(参照2018-08-06)

前田史郎、WEBRONZA、”改ざん翌日に「問題ない」と話した財務省中村課長”、2018年06月13日。
http://webronza.asahi.com/national/articles/2018061100009.html
(参照2018-08-06、有料会員記事)

日本共産党、「財務省は昭恵氏関与を認識」、”辰巳議員、宮本岳志議員会見 森友学園の土地売却問題について 安倍昭恵氏の証人喚問要求 ”、2018/02/01 に公開。
https://www.youtube.com/watch?v=SXSRAfJU0TE
(参照2018-08-06)

朝日新聞デジタル、”森友文書、財務省が書き換えか 「特例」など文言消える”、2018年3月2日05時20分。
https://www.asahi.com/articles/ASL317533L31UTIL060.html
(参照2018-08-06、有料会員限定記事)

毎日新聞、”森友学園問題 改ざん・財務省 思い込みと「最強」の慢心”、2018年6月4日 22時05分(最終更新 6月4日 22時11分)。
https://mainichi.jp/articles/20180605/k00/00m/040/106000c
(参照2018-08-06、会員限定有料記事)

HUFFPOST、ハフポスト日本版編集部 、”財務省、森友の決裁文書を読まずにハンコ。野党の批判に、麻生財務相「私も読まずに押すことある」”、
2018年04月11日 15時28分 JST | 更新 2018年04月11日 18時46分 JST 。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/04/11/moritomo-zaimu_a_23408283/
(参照2018-08-06)

2.中村氏の5日間の兼任の不可解(売買契約の成立前後)

人事異動を追って整理して驚いたのが、2016/06/22の中村氏の発令事項だ。

この日の異動で、中村氏は、5つの役を免職されている。

  • 免・兼理財局国庫課長
  • 免・兼理財局国有財産企画課長
  • 免・兼理財局国債企画課
  • 免・兼理財局国有財産調整課
  • 免・兼理財局国有財産業務課

財務省ホームページ、トップページ > 新着一覧 > 平成28年(2016年)新着情報:6月(https://www.mof.go.jp/whats_new/201606.htm)、
”人事異動(平成28年6月22日) (PDF:168KB)”、平成28年06月22日(水曜日)。
https://www.mof.go.jp/about_mof/introduction/personnel/transfers/H28.06.22-1_21.pdf
(参照2018-08-06)

この発令の5日前の6/17に中村氏は、

  • 理財局総課課長

に就任している。

つまり、中村氏は、6/17から6/22まで、理財局総務課長と理財局国有財産企画課長を兼任していた。

そして、当時の時系列をピックアップして整理すると、

2016/06/06 17:36「内緒にしてて欲しいと言われてますが、局長の異動があるらしく、今の局長の間に処理したいとのことです」
2016/06/09 近畿財務局→学園側契約書案送付。学園側「問題ない」
2016/06/17 人事異動「理財局長」迫田→佐川。「総務課長」富山→中村
2016/06/20 売買契約成立
2016/06/22 人事異動「理財局国有財産企画課長」中村→冨安

となっている。

2016/06/06の携帯メール画像については、初出が不明だが、今現在ネットで拾えるものとしては、
http://i.imgur.com/HdTCQFx.jpg
(参照2018-08-06)

当期間の交渉記録については、財務省ホームページ、”決裁文書に関する調査について”の”森友学園等との交渉記録【売却まで】(ファイル容量が大きいため分割しております。)”の ”・ファイル4(PDF:14638KB)”。
https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20180523p-4.pdf
(参照2018-08-06)

この流れを見ると、局長の異動前に、契約方針を決めていて、局長の異動までに契約は間に合わなかったが、中村氏が「国有財産企画課長 兼 国有財産調整課 兼 国有財産業務課」の兼任を延長し、契約を見届けてから、兼任を解除したかのように見える。

中村氏は、この契約について関わっていた人物であり、理財局本省での担当者であった疑いが濃厚である。(皮肉なことに、財務省側も、2017/02/22の会議に総務課長が同席していた理由について、「彼は、国有財産企画課長を務めていたので(経緯を)よく知っているからだ」と答えている。)

しんぶん赤旗、”公文書改ざん 官邸ぐるみ 辰巳議員追及 事前に把握 明白”、2018年4月17日(火)。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-17/2018041701_04_1.html
(参照2018-08-06)

中村氏自身の釈明が必要であろう。

3.釣り合いの取れていない処罰の軽さ

改ざん理由を問われて、麻生大臣は「それが分かれば苦労せん」と答えたそうだが、おそらく財務省の報告書を読んでもいないし、理解もしていないのだろう。

この発言に対しては、そもそも、大臣が理解できない報告書を出していいのか、という問題があるが、その点は誰もツッコんでいないようだ。おそらく、世間では、報告書の問題以前に、大臣がいろいろ足りないところに問題があると思われているのだろう。

犯した罪に対しての処分の軽さが問題であるが、トップが責任を取らないのに下に処罰を加えることなどできない。そういう自覚さえないのだろう。

無知によって理解できないのであれば、教えてもらって勉強して分かるようになればいいが、無恥によって理解しようとすらしないのであれば、どうしようもない。つける薬は無い。

話がそれてしまったが、財務省の報告書では、明確にしているところと、あえて正確に書いていないところがある。

その象徴とでもいえる存在が、元総務課長の役割である。

当ブログでも、報告書の考察をした際に指摘した(「森友問題」「決裁文書の改ざん等に関する調査報告書について」(2018/06/04)等について(後編)ー改ざん経緯の考察)が、報告書では、実際に改ざんの指示を出した指揮系統をたどっていくと、最後に行き止まるのが、この元総務課長である。元理財局長は、明確な改ざんの指示を出しておらず、後から追認したに過ぎない。

そうなると、この元総務課長が改ざんを指示した源であり、公文書改ざんという歴史への犯罪に対して見合うだけの重い罰を下さなければならないが、結果は、停職1ヶ月の軽い処分で、処分明けての7/27の財務省人事で、まるで定期異動のように新たな地位を与えられた。

報告書では、実際に指示を出した責任者と名指しされているのに、それに対する処罰はわずか1ヶ月の停職だった。

このアンバランスさを説明するものは、一つしかない。

元総務課長は、(局長以外の)上からの改ざん指示を受けた

という疑いだ。

4.キーマンとして浮上した元総務課長

元総務課長は、朝日新聞による財務省改ざんスクープが行われた当日の野党合同ヒアリングで「答えられない」と連発して以降、表に姿を現さなくなった。

財務省の報告書では、改ざん指示を出した実行犯として扱われているが、その処罰は軽かった。

これは、財務省以外のところから指示があったことを示唆するものであり、財務省の報告の限界であろう。(その意味で、麻生大臣の「それが分かれば苦労せん」は財務大臣の限界であり、無能さの表れであろう)。

そうなると残されているのは、財務省以外の調査機関から、元総務課長の言い分を聞き取ることである。

財務大臣自身が、報告書の内容に納得できていない以上、財務省以外の実効性のある調査が必要である。

そしてその際、キーマンとなるのが、元総務課長である。

改ざんの最終決定権者として、わずか数年の地位のために汚名をかぶり続けるのか、それとも、自分が今の政権にとって都合の悪い情報を持っていることを自覚し、政権からしっぽを切られることを恐れ続けるのか、元総務課長の今後の態度が注目される。

過去の考察のカテゴリーはこちら→「森友問題」考察

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