「森友問題」8億円値引きごみストーリーにおける国土交通省の関与についての現時点でのまとめと考察(2020/04/08)

架空小説「仮名手本森友学園」

2020年3月26日発売の週刊文春に、森友問題で自死した財務省職員の手記公開の続報として、売買担当者だった職員が遺族に証言していた内容が掲載された。

池田氏は昌子さんに対し、「どれだけ費用がかかって、どれだけ売却価格から引かなければならないかということを、自分たちは最後まで調べようと努力したが、(国交省の)大阪航空局(問題の土地の管理者)は動かなかった」「この8億の算出に問題があるわけなんです。確実に撤去する費用が8億になるという確信というか、確証が取れていない」などと明かした。

(引用者注:池田氏は当該土地の近畿財務局の売買担当者で、自死した職員の改ざん時の上司。昌子さんは仮名)

「週刊文春」編集部、”「8億円値引きは問題だった」森友事件 近畿財務局「売買担当者」が赤木さん妻に告白”、週刊文春 2020年4月2日号。2020/03/25。https://bunshun.jp/articles/-/36823(参照2020-04-06)

これを読んだ時、違和感があった。近畿財務局が大阪航空局のせいにしているように感じたからだ。

8億の値引きに関しては、以前、「値引きストーリー」の考案者の考察を試みた際、出てきた「書類と音声データを見れば、大阪航空局が主導しているように見える」としたものの、本省理財局がそれより以前にひな型を用意していた可能性を考えていた。[当ブログ記事”「森友問題」値引きストーリー考案者の考察(後半)―主導者の考察”]

だが一方で、大阪航空局にも、これまで違和感があったことも思い出した。

私は、森友問題における国土交通省については、「わき役のイメージが強い」としながらも、いろいろと立ち回っている姿には疑問に思っていた。以前、それまでの公開された文書等を元に考察してみたものの、不十分なものに終わっていた。(当ブログ記事”「森友問題」公開された文書に見る国土交通省の関与についてのまとめと考察(2019/09/14)”)

そこで今回は、文春に掲載された新たな証言を考慮に入れて、改めて、「ごみストーリー」における、国土交通省の役割について考察したい。

これまでの「ごみストーリー」の考察

「8億円値引きごみストーリー」については、当ブログでもこれまでも何度か考察してきた。

当ブログ記事
「森友問題」値引きストーリー考案者の考察(前半)―問題のポイント
「森友問題」値引きストーリー考案者の考察(後半)―主導者の考察
「森友問題」「ごみ論法」の研究
ほか

当初は、学園側顧問弁護士が、ごみストーリーの主導者であるように思われていた。実際、建築物の瑕疵について実績があったと聞いていたからだ。

主な案件実績
・国内大手ゼネコンの建築瑕疵を巡る訴訟・調停

https://www.kitahama.or.jp/professionals/yasuo-sakai/(参照2020-04-08)

ところが、音声データと改ざん発覚後に応接録等が出てくると、国土交通省大阪航空局の職員が、値引きのスキーム(枠組み)を言い出していることが分かり、顧問弁護士が主導者である可能性は薄くなった。(話はそれるが、この件で、顧問弁護士に対しては、別の説”「森友問題」音声データがすべて出てきて分かったこと(2018/02/17)”を補強することになった。)

では、国土交通省が主導したのか、というと、その必然性は薄いように思えた。というのは、(不十分な)応接記録の公表によって、この土地取引を巡る問題は、当初から改ざんも含めて本省理財局が主導していたことが、明らかになったからだ。(また、先日公表された自死職員の手記もそれを裏付けている。)

時系列的にも、夫人付き職員の問い合わせがあった後に貸付後の売買についての法律相談をしており、本省理財局がある程度の売り渡しスキームを作っていたことが想像された。

そのため、ごみストーリーの主導者は、本省理財局である可能性が高い、と、これまでは結論付けていた。

新たな証言と、過去に見逃してきた違和感

ところが、今回の、自死した職員の奥さんが聞いたという池田氏の証言は、これまでの考察を否定する要素を含んでいた。

8億円の値引き見積もりについては、近畿財務局が大阪航空局に対して依頼し、増額したという報道[”「森友問題」で今日分かったことのまとめと考察(2018/04/12)”ほか参照]があったため、「大阪航空局が動かなかった」という池田氏の証言は、違和感があった。池田氏の近畿財務局が大阪航空局に対して増額を依頼して成功しているのに、なぜ「動かなかった」と言っているのか。

すぐに思いついたのは、池田氏が遺族に対していたたまれなくなって、大阪航空局のせいにするウソをついたという可能性だ。

ありうることであり、不自然ではない。

だが、一方で、改めて、財務省と国交省との間で対立している点を振り返ると、池田氏を含めた財務省側の主張には、ある程度の一貫性がある。

上記のブログ記事でも指摘したことだが、

まず、「ごみストーリー」の提示が最初行われたのが、2016/03/16であり、大阪航空局の職員が、「国側に瑕疵がある」とほぼ断言しているのに対し、近畿財務局の職員は、この時点ではどっちつかずな発言をしている。さらに、2016/03/30と思われる打合せでの業者メモでも、「航空局・財務局→彼らのストーリー」と、航空局の名前が財務局より先に書かれていた。

図表7-1 校舎建設中に出てきた大量のごみの処分に関する主なやり取りの概要

会計検査院、”「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」(平成29年11月報告)に係るその後の検査について”、平成30年11月22日。[図表7-1、p24、PDFページ29]。https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/pdf/301206_sonogo_01.pdf(参照2020-04-08)

また、増額依頼の件では、近畿財務局と大阪航空局の証言に食い違いがあり、特に、大阪航空局の方には、意見の不一致と変遷がうかがえる。

図表8 近畿財務局職員及び大阪航空局職員からの聞き取り内容

会計検査院、”「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果について」(平成29年11月報告)に係るその後の検査について”、平成30年11月22日。[図表8、p39、PDFページ44]。https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/pdf/301206_sonogo_01.pdf(参照2020-04-08)

そして、共産党により公表された、「航空局長と理財局長との意見交換概要(2017.9.7)」では、航空局側が「瑕疵担保免責」での主張を押しているのに対し、理財局側は「もう少し考えさせてほしい」と、一歩引いた状態だった。

航空局長と理財局長との意見交換概要(2017.9.7)

日本共産党中央委員会、”会見 2018.06.05 森友問題追及チームが記者会見で公開した内部文書”、「PDF形式のファイル」、”同”。https://www.jcp.or.jp/web_info/images/20170907_iken_kokan.pdf
(参照2020-04-08)

改めて見ると、「ごみストーリー」については、国土交通省の方が積極的だったことが分かる。

これらについては、私も過去に気付いていたものの、「財務省本省がこの問題の当初から改ざんに至るまで主導者であった」という事実の前に、重要でないものだと思い込んでいた面が否めない。

事実、財務省本省理財局は、学園側の問合せがあった当初から関わっており、公文書改ざんという歴史的犯罪行為を起こしただけに、この問題の主導者であることは間違いない。だから当然、「ごみストーリー」に関しても財務省が主導者である、思ってしまっていたが、今回の池田証言も考慮すると、ミスリードされてきた可能性も疑わなければならない必要が出てきた。

「ごみストーリー」に関しては国土交通省主導なのか。

「ごみストーリー」がなぜ成立したのか?

「ごみストーリー」に積極的な国土交通省に対して、やや引いた感じであった財務省の違いは、地方局である大阪航空局-近畿財務局だけでなく、本省部局の国土交通省航空局-財務省理財局の間でも存在した。

今回の池田証言では、大阪航空局が「動かなかった」としているので、仮に本省理財局主導であれば、本省理財局が本省航空局と交渉し、本省航空局から大阪航空局へ指示が行われ、近畿財務局は蚊帳の外だった可能性も無くはない。

ただ、上で示したように、局長同士の意見交換でも本省理財局と本省航空局とでは意見は一致していなかった。それを考えると、本省理財局が近畿財務局を無視して大阪航空局に対して指示した可能性は低い。

だが、最終的には、「ごみストーリー」は成立している。

本省の部局同士で対立していたのにもかかわらず、成立したとなれば、その対立を解消した理由は一つしかない。

本省部局より上の指示があった。

まだまだ新たな発見と考察がある。

森友問題は終わっていない。


過去の考察のカテゴリーはこちら→「森友問題」考察

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