「桜を見る会」から学ぶ行政文書管理―1.公文書管理法による決まり

「桜を見る会」を巡る疑惑では、再び、行政文書に関して問題が起こっている。

森友問題では、決裁文書の改ざんという「歴史への犯罪」が行われて、安倍政権は「深く反省」と口にしたはずだが、その後のふるまいを見る限り、その反省とは、「今度は上手くやる(改ざんをバレないようにする・ばれてもシラを切る)」ということのようだ。
[森友問題での公文書管理から見た問題点の指摘については、当ブログ記事”「森友問題」無いはずの交渉記録が出てきた理由―公文書管理の視点から”]。

この行政文書の管理については、安倍政権下では問題を多く含み、改悪が進んでいるように見えるため、その存在意義自体が問われている。

また、追及する側も、官僚によるあまりにもいい加減な説明によって、行政文書管理についてのイメージが悪く受け取られてしまっており、行政文書の実際の運用状況についても、理解が足りない面もある。

そこで、行政文書がいかに登録されて、保存期間を迎え、廃棄・延長・移管されるか、等の基礎的・実務的な流れを、当ブログでは複数回に分けて説明することにしたい。

(第1回となる今回は、公文書管理法によって決められていることを整理する。内容的には法律上の基本的なことなので、法律を読んで理解できる人は今回は読み飛ばしてもらってかまいません。次回・次々回(予定)も、政令・訓令と法令関係の基礎的な話なので、具体的な話については、第4回以降の実務的な行政文書登録作業について(予定)に進んでください。)

1.公文書管理法による決まり

まず、行政文書の登録作業の具体的な内容を説明をする前に、公文書管理法(公文書等の管理に関する法律)によって、どのように行政文書が作られ、登録・整理され、保存期間満了後にどう処分されるか、など、いかに決まっているかを整理したい。

「公文書等の管理に関する法律」については、

電子政府の総合窓口e-Gov、”公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)”、最終更新: 平成二十八年十一月二十八日公布(平成二十八年法律第八十九号)改正。施行日: 平成二十九年四月一日。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=421AC0000000066(参照2020-01-09)

その目的とは

この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。

同上。「第一章 総則 (目的) 第一条」。(参照2020-01-09)

ここで重要なのは、公文書が

歴史的事実の記録

であり、

健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源

ということだ。

そして、残された公文書によって、

現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすること

を目的として、公文書を作成し、残すためのルールを定めた法律が制定された。

補足:説明を果たすべき公文書を隠蔽・隠滅することや、事実を捻じ曲げて公文書を改ざんすることは、言語道断で、国民に対する背任行為であり、民主主義への挑戦、歴史への犯罪である。

行政文書とは

この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)を含む。第十九条を除き、以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。

同上。「第一章 総則 第二条 4」。(参照2020-01-09)

ここでは、行政文書の定義がなされている。

行政文書である条件を、要点だけをまとめると、

職務上作成または取得した文書
職員が組織的に用いるもの
当該行政機関が保有しているもの

の三要件を満たせば行政文書である。

補足:条文での「文書」の後のカッコ内の「(図面及び電磁的記録(・・・省略))」の長々とした記述は、分かりやすく言い換えると、「文書といっても文章が書かれた紙だけではなく図面も行政文書に含まれるし、パソコンで作成した文書や、カセットテープやCD―Rなど機器等を使って再生できる電磁的記録も行政文書として含める」という意味。また、条文末尾の「次に掲げるものを除く」が意味しているのは、分かりやすく言うと、大量に印刷し不特定多数への配布を目的とする冊子物や、特別に保管保存する必要がある歴史的文書は、行政文書であっても行政文書管理には含めないということ。例えば、業務上必要があって購入した市販されている書籍等は行政文書管理には含めない(備品扱い)し、業務説明用のパンフを何千部も刷った場合、これら同じパンフを何千部も行政文書として登録する必要はない。(だからといって、配布目的の冊子物等が行政文書からの記録に残らないのではなく、パンフを作った記録は「パンフレット作成業務」といった形で作成過程や成果物が分かるように行政文書として登録・保管されることとなる。)

文書の作成

行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。

同上。「第二章 行政文書の管理 第一節 文書の作成 第四条」。(参照2020-01-09)

文章が長くて、一読ではわかりにくいが、ここでは文章を作成する目的・理由を明示している。

作成が義務付けられているのは、

経緯も含めた意思決定に至る過程
事務及び事業の実績

であり、これらのことが、

合理的に跡付け、又は検証することができるよう

に文章を作成しなければならない。

補足:条文の「次に掲げる事項」では、「法令」についての制定・改廃・経緯についてなど、具体的な項目が5項目並んでいる。「この5項目以外は文書作成義務がない」わけではなく、この5項目については特に文書作成の義務付けが明示されていると解するべきだろう。条文で「次に掲げる事項」に続けて「その他の事項」を並列させたのは作成義務がこの5項目のみに限らないことを示している。

文書の管理

行政機関の職員が行政文書を作成し、又は取得したときは、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。

同上。「第二章 行政文書の管理 第二節 行政文書の整理等 (管理) 第五条」。(参照2020-01-10)

出来上がった文書・入手した文書については、そのままにしておくのではなく、整理・管理しなければならない。

そのために、ルールに従って、

文書の分類
文書の名称付与
保存期間の設定
保存期間満了日を設定

をすることで、行政文書として登録・管理されることになる。

補足:ここでいうルールは、公文書管理法に則って当該行政機関によってそれぞれ定められ、「○○省行政文書管理規則」といった形で決められている。

文書の保存

行政機関の長は、行政文書ファイル等について、当該行政文書ファイル等の保存期間の満了する日までの間、その内容、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、適切な記録媒体により、識別を容易にするための措置を講じた上で保存しなければならない。

同上。「第二章 行政文書の管理 第二節 行政文書の整理等 (保存) 「第六条」。(参照2020-01-10)

行政文書として保存期間中は、文書の適切な保存と文書の利便性を考慮して、保存場所を確保する必要がある。

要するに、文書が紛失したり行方不明になったりしないように、適切な場所で適切に分かるように管理しろ、という当たり前の指示だ。

補足:条文には「適切な記録媒体」とあるが、具体的には、紙シール・二次元バーコード・ICタグといった、図書館等での文書管理で見られるような媒体が想定され、技術の発展やコストなどによって適切さは変化すると考えられる。

行政文書ファイル管理簿

行政機関の長は、行政文書ファイル等の管理を適切に行うため、政令で定めるところにより、行政文書ファイル等の分類、名称、保存期間、保存期間の満了する日、保存期間が満了したときの措置及び保存場所その他の必要な事項(行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号。以下「行政機関情報公開法」という。)第五条に規定する不開示情報に該当するものを除く。)を帳簿(以下「行政文書ファイル管理簿」という。)に記載しなければならない。ただし、政令で定める期間未満の保存期間が設定された行政文書ファイル等については、この限りでない。

同上。「第二章 行政文書の管理 第二節 行政文書の整理等 (行政文書ファイル管理簿) 「第七条」。(参照2020-01-10)

管理・保存された行政文書は、管理簿に登録しなければならない。

その管理簿の名称が、

行政文書ファイル管理簿

で、作成された行政文書は、その管理簿に、それぞれの行政文書についての

分類
名称
保存期間
保存期間が満了する日
保存期間が満了した時の措置
保存場所
その他必要な事項

を記載しなければならない。

行政文書の帳簿であり、目録の役割を果たす。

補足:行政文書ファイル管理簿は、各行政機関ごとに作成され、それぞれの機関で定められた行政文書管理規則に従って管理される。行政文書ファイル管理簿自体も行政文書であり、年度の1年ごとに作成・登録・保管され、保存期間は最長の30年と決められている。

保存期間満了後の文書の移管又は廃棄

行政機関の長は、保存期間が満了した行政文書ファイル等について、第五条第五項の規定による定めに基づき、国立公文書館等に移管し、又は廃棄しなければならない。

同上。「第二章 行政文書の管理 第二節 行政文書の整理等 (移管又は廃棄) 「第八条」。(参照2020-01-10)

それぞれの行政文書は、行政文書ファイルへの登録時に、保存期間の満了日と、満了した時の措置を設定している。

保存期間の満了日を迎えた文書は、その設定に従って、移管や廃棄を進めることになる。

補足:行政文書ファイル登録時に設定した満了日と措置は変えられないのではなく、保存期間を延長したり、廃棄予定だったものを国立公文書館等への移管することは可能だ。また、廃棄には内閣総理大臣への協議と同意が必要である[第八条第二項]。

(まとめ)

公文書管理法における行政文書の決まりは以上の通りに説明され、以降の条文は、管理状況の報告等、行政文書管理規則についての決まりが続き、その後は、法人文書、歴史的公文書、利用の方法、公文書管理委員会、等の説明が続く。

行政文書の効率的な管理を目的として、この公文書管理法に則って、施行令・ガイドラインが作成され、さらにそれらの方針に従って、それぞれの行政機関で行政文書管理規則が作られ、その規則に従って、行政文書が作成、登録、保管、廃棄又は移管されていくことになる。

今回の連載では、行政文書管理の実務的な内容を解説することを目的としているが、具体的な話をする前に、次回は、公文書管理法の下にある、施行令についての説明をする。

「桜を見る会」から学ぶ行政文書管理―2.施行令による決まり


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