「桜を見る会」2020/01/22ブログで指摘した「起算日」の誤解点について

前回ブログ「「桜を見る会」総務課から出てきた行政文書の整理と考察(2020/01/22)」では、内閣府大臣官房総務課に注目した。(名簿の管理先とみられている人事課ではなく。)

大臣官房総務課が「作成・取得者」である「桜を見る会」の名称の行政文書ファイルを検索して調べたところ、いくつかの文書管理上の問題が見えてきて、

「人事課は他省庁(の人事課)からの推薦名簿をとりまとめただけで、統合した名簿を管理・利用していたのは総務課」

という疑いが出てきた。

文書管理上、見えてきた問題の一つが、「起算日」についてで、

「平成28年以降、総務課は開催前の4月1日を起算日としている」

ことだった。

「起算日」について、改めて、施行令などを調べ直したところ、総務課がなぜそうしたのかの根拠らしきものが分かってきた。

そこで今回は、その総務課の誤解(もしくはこじつけ)について取り上げる。

「起算日」の法令上の定義

ここで取り上げる「起算日」とは、登録された行政文書ファイル等の保存期限のスタートとなる基準日だ。その起算日を基として、決められた保存期間中は保管され、保存期間が満了した後はあらかじめ決められた措置(廃棄・延長・移管など)に移る。

そしてその起算日は、「公文書等の管理に関する法律施行令」によって次のように二つの項目で定められている。

4 法第五条第一項の保存期間の起算日は、行政文書を作成し、又は取得した日(以下「文書作成取得日」という。)の属する年度の翌年度の四月一日とする。ただし、文書作成取得日から一年以内の日であって四月一日以外の日を起算日とすることが行政文書の適切な管理に資すると行政機関の長が認める場合にあっては、その日とする。

電子政府の総合窓口e-Gov、”公文書等の管理に関する法律施行令(平成二十二年政令第二百五十号)”、施行日:平成二十八年一月一日、最終更新: 平成二十七年十二月十八日公布(平成二十七年政令第四百三十号)改正。https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=422CO0000000250。「第八条第四項」。(参照2020-01-25)

6 法第五条第三項の保存期間の起算日は、行政文書を行政文書ファイルにまとめた日のうち最も早い日(以下この項及び第十一条第一項において「ファイル作成日」という。)の属する年度の翌年度の四月一日とする。ただし、ファイル作成日から一年以内の日であって四月一日以外の日を起算日とすることが行政文書の適切な管理に資すると行政機関の長が認める場合にあっては、その日とする。

同上、「第八条第六項」。(参照2020-01-25)

「起算日」を「翌年度の四月一日とする」理由

「なぜ文書が完成された日が起算日ではないのか?」

と思われる方もいるだろう。「お役所の年度主義」と言ってしまえばそれまでだが、実際には、実務上の要請により行われている面が大きい。

すべての文書を完成するたびに直ちにファイル登録をして管理簿に反映させるのは、理想ではあるが、相当な負担となる。頻繁に更新作業を行うことになるので、反映されるタイミングが把握しにくく、かえって実状と管理簿の間に生じたずれに混乱してしまう。さらに、それぞれの起算日が異なる場合は保存期間満了日もずれることとなり、満了後に廃棄処分となる文書の確認も、一年中その都度行わなければならなくなり、負担は大きく、作業の効率は悪い。また、極端な例を挙げると、毎年行われている業務で「1年保存で満了後廃棄」の文書の場合、前年に4月30日に行われ完結し保存した文書があってその文書を参考にしている中、今年はその業務が5月の連休明けに行われることになったときは、5月1日になった時点で前年度の文書を廃棄しなければならないという矛盾が生じる。

こういった手間や、例年行われる事業でも年ごとに日付がズレたせいで利用している最中に廃棄措置を迎えたりすることのないように、起算日は「翌年度の四月一日」と(原則)設けられているのである。

四月一日を起算日を統一することで、まとまりをもって年度ごとの文書管理作業(文書登録・廃棄作業・配架など)が行えることから、実務上の要請に基づくものだと言っていいだろう。

(将来的に、文書の電子化が進み、変更が即時に反映されるようになれば、「翌年度の四月一日」にそろえる要請は少なくなるが、紙文書が介在する以上は、こういった区切りは不可欠だろう。)

「起算日」の例外

ただ、起算日には、例外がある。上記で示した、二つの項目では、それぞれ、「文書作成取得日から」・「ファイル作成日から」のあとに以下のように、共通の「ただし」書きが続いている。

一年以内の日であって四月一日以外の日を起算日とすることが行政文書の適切な管理に資すると行政機関の長が認める場合にあっては、その日とする。

同上。

この点については、あくまで「適切」かどうかが基準であり、原則と違う日を設定するだけの説明が求められる。

以下、「行政文書の管理に関するガイドライン」の説明図を引用する。

「行政文書の管理に関するガイドライン」https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/kanri-gl.pdfのp25の図のスクリーンショットの切り抜き(参照2020-01-24)

<保存期間の満了する日の設定>

”行政文書の管理に関するガイドライン”、[平成 23 年4月1日 内閣総理大臣決定 令和元年 5 月1日 一部改正] 。 p25、PDFページ26。https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/kanri-gl.pdf

「起算日」の抜け穴!?

ここまで説明しておいて言うのもなんだが、今回取り上げる「内閣府大臣官房総務課」の行政文書の起算日の「誤解」は、上記の原則以外の「例外」を利用したものではない。

では、総務課は、なぜ、開催日前を起算日にする、という不自然なことをしたのだろうか?

内閣府大臣官房総務課は、平成28年以降の「平成〇年桜を見る会」の行政文書ファイルの起算日を、突然、1年繰り上げている(二件ある平成26年のファイルは除く)。

そのため、平成27年と平成28年のファイルは、どちらも起算日が「2016年4月1日」と同じになっているなどの矛盾が出ている。

「桜を見る会」総務課から出てきた行政文書の整理と考察(2020/01/22)の検索結果のまとめを参照

なぜこんなことが起こったのか不思議に思い、改めて、法律施行令やガイドラインなどを読み直した。

すると、法律施行令「第八条第六項」の、

行政文書を行政文書ファイルにまとめた日のうち最も早い日

同上、”公文書等の管理に関する法律施行令(平成二十二年政令第二百五十号)”。「第八条第六項」。

の解釈によっては、開催日前でも起算日を設定できるようにも見えた。

どういうことかというと、「平成31年桜を見る会」で例えれば、

仮に、平成31年3月31日までに「桜を見る会」の業務の一環として、「宛て名印刷業務」を終了し、その内容をまとめた文書を作成する(行政文書「平成31年桜を見る会宛て名印刷業務」[名称は仮、以下同])。

そして、

相互に密接な関連を有する行政文書を一の集合物(行政文書ファイル)にまとめること。

同上、”行政文書の管理に関するガイドライン”、「第4 整理 1 職員の整理義務 (2)」。p17、PDFページ18.

とのガイドラインに従って、(まだ開催されていない)行政文書ファイル「平成31年桜を見る会」に、先に作った「宛て名業務」文書を先行してまとめておく。もしこの日付が、平成31年3月31日以前であれば、施行令での

「まとめた日のうち最も早い日」

は平成30年度中であり、したがって、起算日は「翌年度の四月一日」つまり、(開催もされていない)「平成31年四月一日」になってしまう。

以前たとえたパソコンフォルダでいえば

「平成31年桜を見る会」フォルダ(平成31年4月13日開催予定)
 ├「決裁文書」(済み)
 ├「決裁文書」(未決済)
 ├「仕様書」
 ├「打合せ記録」(途中)
 ├「平成31年桜を見る会あて名印刷業務」(平成31年3月29日検品済み)
 ├「平成31年桜を見る会飲食提供業務」(途中)
 ├「写真」
 ├人事課とりまとめ名簿.xls
 ├宛て名名簿.xls
・・・・・・・・・
 └出席者名簿(実数)(開催日使用)
[名称や拡張子は、テキトーです]

のように、ほとんどが未完成である中、一つだけでも平成31年3月31日までに「まとめられた」時点で、その行政文書ファイルの起算日が決定されることになる。(むしろ、施行令を読む限りは、このやり方が正しいように見えなくもない。)

その解釈は許されるのか?

しかし、このやり方が正しいと言えるだろうか。

この解釈であれば、1年保存の行政文書ファイルでも、2年以上前にファイル内の行政文書を一つでも完成させていれば(例えば複数年予約や契約の文書)、その翌年度の四月一日が起算日となり、ファイルの完成年度と廃棄年度が一致しかねない。(極端な場合は、ファイルの完成年度の前に廃棄年度が来ることも起こりえる。)

これは問題であり、特に「桜を見る会」のように、適切な管理が行われなかった(または、現在進行形で不適切な管理が行われつつある)行政文書に対しては疑念がもたれて当然だ。

ただ、このような解釈を直接否定するような指摘は、私には見つけられなかった。

先に取り上げた「行政文書の管理に関するガイドライン」では、

「なお、進行中の事務に係る文書は、仮分類での 整理となる場合もある。」[同、p20、PDFページ21]
「一定の事案処理が完結した後」[同、p22、PDFページ23]

などの指摘があるので、普通に考えれば、先の行政文書ファイル「平成31年桜を見る会」は、平成31年3月31日の時点では「(仮)」であり、その時点で起算日を設定することは不適切だ。

だが、公文書法と施行令を基にガイドラインが作られているため、ガイドラインよりも上位にある施行令の「まとめた日のうち最も早い日」を主張されれば、「官僚にも一分の理」があるように思えてしまう。(むしろ、ほんのわずかな理からこじつけるのが官僚の本質でもある)。

もっとも、総務課がそのように説明にしても、矛盾点はある。

大臣官房総務課が行政文書ファイルに登録してある「桜を見る会」は、平成31年の分の「作成・取得年度等」が「2017年度」となっており、この理屈だと2018年4月1日が取得日になるが、さすがに、2019年4月開催された「桜を見る会」の行政文書ファイルの取得日を1年以上前にするのは気が引けたのか、登録では2019年4月1日になっている(これでも本来より1年早いが)。

仮に総務課が起算日について施行令を基に言い訳したとしても、それは、行政文書ファイル登録のずさんさと、そのずさんさを利用したヘリクツに過ぎないだろう。

とはいっても、施行令の文言は誤解を生むものであるので、何らかの対処を当局に求めたい。

(補足)
ただ、「起算日」については、以前、「平成」の年号の選定経緯の行政文書に関して、問題となった。文書は他部署が引き継ぎ、新たにまとめたとして、まとめた時点を新たに起算日としたため、そこからさらに30年保存となり、公文書館に移管・公開されるのを引き延ばすことになると批判され、その後、再び起算日を元に戻した。

平成改元文書、3月末に満了 起算日前倒し

日本経済新聞、”同上”、2019/1/24 23:00。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40442000U9A120C1CR8000/(参照2020-01-25)

「平成」改元の行政文書 公文書館に移管せず内閣府で

NHK政治マガジン、”同上”、2019年3月21日。https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/15638.html(参照2020-01-25)

こういった面もあるので、施行令の「まとめた日のうち最も早い日」という表現が一方的に不適切であるのではないことも、留意しておきたい。


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