コロナと五輪についての読売新聞の社説(2021/07/31)のスジがすごい

2021年7月30日に、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は、新たに4府県への緊急事態宣言発令などの決定をした。

その翌日の読売新聞朝刊の社説の一本目は、

緩みは五輪のせいではない 緊急事態拡大

読売新聞2021年7月31日朝刊総合面3面社説、”同”、大阪本社版13S4面。

だった。

こんな引き付けられる(ツッコミたくなる)タイトルを出されては、熟読せざるを得ない。そして熟読した結果、いつも気になったことを備忘録程度に書いているメモ(当ブログ記事”今日も読売新聞はやっぱりすごい(2021年下半期)”)には収まりそうにないので、独立した記事にすることにした。

このタイミングで、こんな内容で書いてくる読売新聞の社説はやっぱりすごい。

読売新聞の社説のイメージ(個人の感想です)がすごい

本題に入る前に、まず、読売社説についての、個人的イメージを語っておきたい。

読売新聞の社説と言えば、話題になった事件等のテーマを、他紙より周回遅れで社説に取り上げることがほとんど(2,3日遅れのイメージ)で、タイムリーさにやや劣る印象だ。まるで、(社外も含めた)関係者のチェックが何段階もあるかのようだ。(個人の感想です)

また、社説は(基本的に)毎朝二本分掲載され続けているので、その内容は、どうしても玉石混合にならざるを得ない。いくらあの読売新聞だと言っても、すべてがすべて、名文というわけにはいかないだろう。

取り上げたテーマが時宜にかなったものであることもあれば、「今さら?」と思うタイミングで取り上げることもある。もっともな意見を堂々と述べていることもあれば、疑問に思えるような意見を述べていることもある。惰性で書いてあるように見えるものもあれば、(外部の関係者に)書かされているように見えることもある。(個人の感想です)

ただ、個人的には、最近は、読売新聞の社説は、「まともなこと」を書いているイメージだった。(実際、最近、当ブログ記事”今日も読売新聞はやっぱりすごい(2021年下半期)”の「・2021/07/08(木)朝刊社説3面」でも、社説について「もっともな意見」と同意していた。)

今回の社説のタイミングがすごい

今回の社説は、宣言発令(地域と期限の拡大)決定の翌日に、「緊急事態拡大」をサブタイトルにして掲載している。

いつもの読売社説なら、木曜の夜に発表された内容であれば、金曜朝刊には当然のように間に合わず、土日は開店休業状態で、結果月曜の朝刊にも間に合わず、火曜の朝刊にようやくそのテーマで社説を載せる印象だ。(当ブログ記事”「日本学術会議任命拒否」でも読売新聞はやっぱりすごい”参照)

ところが、今回は、翌日の朝刊にいきなりそのテーマで社説を載せていた。

新聞としての速報性を考えると、賞賛すべきことだが、「緊急事態拡大」とサブタイトルであるものの、見出しは「緩みは五輪のせいではない」(同上)。どうやら、五輪の方が主題であるらしかった。

また、読売新聞では、ちょうど前日7月30日朝刊に、政治面で、「語る 東京五輪・パラ」(読売新聞政治面連載)が始まっていて、トップバッターは安倍晋三氏だった。同日には桜を見る会前夜祭での公選法違反等で検察審査会で不起訴不当の議決が出ていたことが報道され、今回の社説の同日の紙面には、1面と政治面・社会面で、不起訴不当の件が記事に載っていた。

つまり今回の社説のタイミングは、

・緊急事態宣言発令(拡大)された翌日の社説で一見すると早い印象
・ただ、発令方針自体は前から予想されていたので準備はある程度できたのでは?
・よく読めば今回の社説の主題は「五輪」
・その前日には五輪について政治家が語る連載が政治面でスタート
・その連載のトップバッターは安倍晋三氏
・その安倍氏は不起訴不当と議決されたことが社説当日の紙面に3面に渡って記事に

という、いろいろと解釈できそうな情報があり過ぎて、「なんだかなー」と言う感想しかない。[安倍氏で始まった政治面での連載の件については、”今日も読売新聞はやっぱりすごい(2021年下半期)”の「・2021/07/30(金)朝刊政治面4面」参照]

今回の読売新聞の社説は、タイミングが早いように見えて実はいろいろな理由でこのタイミングでしか出せなかったんじゃないかといろいろと思わせてすごい。

今回の社説に書いてある内容もすごい

一応、社説の中身にも目を通しておく。

冒頭は、「東京五輪で日本勢の快進撃が続いている」(同上)との、威勢のいい内容。やっぱり緊急事態宣言拡大のことよりも、五輪のことが主題のようだ。

もちろん、感染対策を尽くして無事に閉幕できるようにとも(おまけのように)言及している。(個人の印象です)

ただその後は、これまでのメダル獲得結果を選手名を出しての羅列。ところが、金メダルを取った日本代表選手の名前をすべて出すのかと思えば、そうではなかった。柔道では選手名を出さずに、「柔道も」(同上)と、ついでのような扱いで、これまでに金メダルを取った選手としては、前日夜に金を獲得したフェンシング男子エペ団体のことを言及できなかったのは原稿締め切りに間に合わなかったとして仕方がないにしても、その二日以上前に堀米雄斗選手と女子ソフトボール日本代表チームが金メダルを獲得しているのに、今回の読売社説では、なぜかこの二者の言及は無し。

結局、よく分からない基準で選手を取り上げており、内容的にもすでに読売の他の紙面で読んだ記憶のある記述の羅列が長々と続く。最新の内容でもなく、すべてでもないため、これまでのまとめとしてもあまり役に立たないものだった。

そんな内容で、社説の半分が埋まっていた。

半分辺りを過ぎたところで、読売社説は、突然、「気がかりなのは、新型コロナの感染状況だ」(同上)と、コロナのことが「気がかり」始める。読売社説によれば、宣言の対象が拡大し、自粛の緩みやワクチン接種の遅れ、重症化しないと安易に考える若者が増加していること、などが、「問題」だということだ。

ようやく、今回の社説のサブタイトル「緊急事態拡大」について論じるのかと思いきや、読売社説は、その直後の文章で、

一部には、こうした感染拡大と五輪開催を結び付ける意見があるが、筋違いだろう。

同上。

という、「一部には」という見えない敵と戦いだす。

当たり前だが、これまでの感染拡大は、時系列からして、五輪開催が直接の「原因」であるはずがない。誰も「五輪を開催したから感染が増えた」などとは言っていない。

実際には、(「一部」の人ではなく)多くの人が危惧しているのは、

感染拡大している中で、より感染を拡大する要因でしかない五輪開催をしてもいいのか

という、当たり前のことである。

それを、あたかも時系列を無視して「感染拡大と五輪開催を結び付ける」ことで「一部」の人間が反対しているかのようにして、反対する意見がすべて論理的でないかのように批判するのは、それこそ、読売社説の「筋違い」だろう。

そういった「筋違い」の前提の下、読売社説では、その後も、五輪開催を擁護し続ける。

そして、今回の社説での極めつけが、

(前略)拡大の原因を五輪に求めるのは、選手たちにも失礼ではないか。

同上。

という、間違った前提と、突然、「選手たち」を登場させる、謎の展開だ。

繰り返しになるが、(これまでの)拡大の原因は五輪だとは、誰も言っていない。拡大する中で、(これからの)拡大原因の一つになりうる五輪を行ってもいいのか、という苦渋の判断だ。

更に、今回の読売社説が意味不明なのは、それを「選手たちにも失礼ではないか」として、いきなり選手を全面に出したことだ。

当たり前だが、開催を決定する権限は、選手にはない。組織委員会にある。開催側が選手を招待するのであって、参加資格を得た選手は、参加するか・しないか、を選ぶことしかできない。選手を前面に出して開催者側を隠すような言い方こそ、「選手たちにも失礼ではないか」。

そもそもの話だが、誰も、(これまでの)拡大の原因を五輪に求めていないので、「選手たちに失礼」になりようもない。

それなのに、「選手たちに失礼」などと、いきなり選手の名前を出すのは、選手たちがみんな読売社説のような考えをしているとの決めつけであり、それこそ、読売社説は「選手たちにも失礼ではないか」。

それでいて、今回の読売社説では、最後に、

(前略)五輪の会場や施設から感染を広げることのないようにしてもらいたい。

同上。

と、お願いで終わっている。

よく分からないのは、直前に、「拡大の原因を五輪に求めるのは、選手たちにも失礼」(同)と言っておきながら、「五輪の会場や施設から感染を広げることのないように」(同)とお願いしていることだ。

結局のところ、読売社説自体が、五輪から感染を広げる可能性を自覚している。

読売社説では、誰に対して「してもらいたい」なのか、明文化していない。ただ、直前に、「選手たちにも失礼」と言っていることからすると、お願いの対象、つまり「感染を広げること」の可能性がある対象として、「選手たち」が含まれている、と解釈するのが自然だろう。

つまり、読売社説は、五輪は感染拡大の原因ではないが、感染拡大したら「選手たち」のせいだ、と言える伏線を張っておいた、とも解釈できる。

唐突に「選手たちに失礼」と言っておきながら、最後の最後で、「あなたの方こそ選手たちに失礼ではないか」と言い返させてしまうような内容を文章を載せてしまう、読売社説はすごい。

今回の社説はスジがすごい

以上のように、今回の読売社説は、タイミングも、内容もすごかった。

タイミング的には、突然前日に始まった政治面の連載、安倍氏の不起訴不当の議決、緊急事態宣言拡大の直後など、いろいろと想像を膨らませるものだった。

内容的にも、「筋違い」と堂々と言っておきながら、どう読んでも「アンタの方が筋違い」としか思えない内容を展開。「選手」に対しては、前半で言及する選手名を選別する「失礼」を行っておきながら、(架空の)反対意見に突然「選手たちにも失礼」と「選手たち」を前面にさらして盾代わりにし、それでいて最後の最後に「感染を広げないようにしてもらいたい」と丸投げする、「失礼」というスジを最初から最後まで押し通していた。

最近の読売は、まともな社説が多くなった印象だったが、私の勘違いだったようだ。(個人の感想です)

掲載したタイミング的にも、内容的にも、「スジ」を含めて、いろいろなところが悪いとしか思えなかった(個人の感想です)、今回の読売社説は、やっぱりすごかった。


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