「日本学術会議任命拒否」でも読売新聞はやっぱりすごい

2020年10月6日(火)読売新聞朝刊の社説2本は、一番目のテーマが「トランプ氏感染」で、二番目が、

学術会議人事 混乱回避へ丁寧な説明が要る

読売新聞2020年10月6日朝刊、大阪本社版、13S総合3面。

だった。

この菅政権による日本学術会議任命拒否については、既に先週末から問題となっていて、主な他紙もすぐに社説で取り上げていたが、読売社説は週末を挟み月曜になっても沈黙、火曜日になってようやく取り上げることになった。

「いつもの周回遅れの読売社説」(個人の感想です)なのだが、今回の社説は私の予想以上に遅れたように思えるので、なぜこんなに時間が掛かったのかについて、考えてみたい。

社説に取り上げるまでの期間が気になってしまう、読売新聞社説はすごい。

日本学術会議任命拒否の他紙の動き

今回の問題は、マスメディアでは、「しんぶん赤旗」が最初に取り上げたようだ。

1日から任期が始まる日本学術会議の新会員について、同会議が推薦した会員候補のうち数人を菅義偉首相が任命しなかったことが30日、本紙の取材で分かりました。

しんぶん赤旗、取材班、”菅首相、学術会議人事に介入 推薦候補を任命せず”、2020年10月1日(木)。https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-10-01/2020100101_01_1.html(参照2020-10-6)

その後、各紙もこの問題を取り上げ、社説で論じている。

主要な各紙のホームページで確認したところ、

日本経済新聞が10/2(金)19:00
毎日新聞が10/3(土)2:01
朝日新聞が10/3(土)5:00

にそれぞれ、以下のタイトルで取り上げてアップしている。

[社説]なぜ学者6人を外したのか

日本経済新聞 電子版、”同”、2020/10/2 19:00。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64549470S0A001C2SHF000/(参照2020-10-6)

社説:学術会議6氏任命せず 看過できない政治介入だ

毎日新聞、”同”、毎日新聞2020年10月3日 東京朝刊。https://mainichi.jp/articles/20201003/ddm/005/070/108000c[ホームページに掲載された時間については、同、「オピニオン>社説」(https://mainichi.jp/editorial/)を参照した](参照2020-10-06)

(社説)学術会議人事 学問の自由 脅かす暴挙

朝日新聞デジタル、”同”、2020年10月3日 5時00分。https://www.asahi.com/articles/DA3S14644624.html(参照2020-10-6)

補足)
今回のテーマでの各紙のホームページでの社説では、日本経済新聞の掲載が、毎日新聞と朝日新聞よりも一日早くなっているが、電子版での掲載時間で、新聞紙としての掲載は実質的には10/3と考えられる(現物は未確認)ので、この3紙は、10/3付朝刊での掲載だったとみていいだろう。
なお、念のため(気まぐれに)、産経新聞もネットで調べてみたが、社説は見つからなかった。ただ、「主張」と言うコーナーで、「【主張】日本学術会議 人事を機に抜本改革せよ」[産経ニュース、”同”、2020.10.3 05:00。https://www.sankei.com/column/news/201003/clm2010030002-n1.html(参照2020-10-6)]のタイトルで取り上げていた。
つまり、読売以外の今回確認した他紙(産経新聞ですら)は、10/3にはこのテーマを社説(とそれに類したコーナー)で(内容はともあれ)取り上げていたことになる。

読売新聞が社説で取り上げるまでがすごい

では、他紙が社説で取り上げる中、読売新聞は、その間(10/1~5)、何をとりあげてきたのだろうか。

分かりやすいように(一つ一つ書き写すのが手間なので)、10/1~5までの社説のタイトルが見れる、読売新聞オンラインの社説コーナーの目次(2020/10/6参照)を切り抜いたスクリーンショットを、以下、引用する。

読売新聞オンライン、”社説”、https://www.yomiuri.co.jp/editorial/(読者会員への登録とログインが必要。2020-10-06参照)の一部分をスクリーンショットした上で切り抜いた画像。

いずれも重要なテーマだが、「これなら今回の任命拒否を取り上げることを後回しにするのも納得」、ということには到底ならないだろう。(個人の感想です)

個人的には、主要な他紙がそろって載せた土曜日(10/3)に読売だけ載せなかったのは、「まあいつもの周回遅れの読売社説ね」と納得できたが、翌日の日曜日(10/4)の社説は「防衛費概算要求」のテーマで、強引だが少し関連があるのかなと思って読んでみても、日本学術会議のことには全く触れていなかった。(この社説については、社説のある総合面3面で「防衛装備庁発足5年」をテーマに特集を組んでいたので、それと連動して事前に準備していたものだったと予想される。[読売新聞2020年10月4日朝刊、「スキャナー」、”防衛装備庁発足5年 やっと初輸出”、大阪本社版、13S総合面3面])

まあ、それでも「週末で休みだったから載せてないのかな」と思って、その次の朝の月曜日(10/5)の朝刊を見ても、載っていなかったので、少し不安になった。「いつもの周回遅れじゃなくてひょっとして出走すらしないつもりか」。

まあまあ、それでも「日曜が休みだから月曜日朝刊には載せられなかったのかな」と自分に言い聞かせるようにして、そのまた次の朝の火曜日(10/6)の朝刊を見ると、やっと、載っていたので、安心した。(二本ある社説のうちの二本目の位置だっけど)

ちなみにこの間(10/2~5)、読売新聞では、社説以外でもこの件を取り上げるチャンスがある(取り上げるべき)コーナーは、いくつもあったと個人的には思っていて、例えば、

『五郎ワールド』(土曜月一連載)
『編集手帳』
『よみうり寸評』
『気流』

などを期待して読んだものの、どれ一つ、この件を取り上げていなかった。(10/2朝刊~10/5夕刊までの読売新聞を読んだ個人的な確認)

こんな、何かを主張せずにはいられない重要なテーマなのに、社説だけでなく、他の紙上のコラムなどでも、なかなか取り上げようとはしない読売新聞はすごい。

10/6の読売朝刊にて解禁?したようですごい

主な他紙から遅れて3日後にようやく「日本学術会議任命拒否」をテーマに社説に載せた読売だが、この日(10/6)の朝刊の一面には、

管首相は5日、読売新聞などのインタビューに応じた。(中略)。日本学術会議の会員候補6名を任命しなかった件に関しては、問題ないとの見解を示した。

読売新聞2020年10月6日朝刊、”首相「インド太平洋推進」”大阪本社版、13S1面。

という記事が載っていた。

そもそも、このインタビューが、菅首相が「応じた」ものなのか、マスコミが「呼び出された」ものなのかは不明だが、時系列を言うと、5日に菅首相により日本学術会議任命拒否についての言及があり、その翌日に、ようやく、読売でも社説で取り上げている。

まるで、

読売新聞は、5日の菅首相の「お言葉」を受けて、(他紙より3日遅れで)ようやく6日に社説でこの件に言及できるようになった

かのようだ。(個人の感想です)

不思議なことに、当日になってようやく、『編集手帳』(読売新聞2020/10/6朝刊)も、『よみうり寸評』(読売新聞2020/10/6夕刊)も、この任命拒否を、待ってましたかというように取り上げていた。

前日まで何も言ってなかったのに、まるで、「10/6になって、ようやくこの件を読売コラムでも言及できる許可が出たか」と思わせるような動きで(個人の感想です)、10/6を解禁日として社説とほかのコラムで統一が取れているように見える読売新聞はすごい。

社説の内容もすごい

こうしてようやく「外部との調整」が済んで出したかのような読売社説だが(個人の感想です)、内容はというと、

・冒頭で「政争の場にしてはならない」と、もっともらしい風の「どっちもどっち」的な当たり障りのないことを今さら言う。
・いちおう、「政府が十分に説明してないのは問題だ」と言っておく。
・「安倍前内閣の施策を批判したことが、除外の理由ではないかと反発している」という、批判が除外の理由だとは疑いも詮索もしない書き方で、他人事のような記述。
・「政府が十分に説明していないのは問題」と言っておきながら、「野党の指摘は的外れだろう」となぜか野党を批判をしだす。
・「政府が十分に説明していない」のに、なぜか「学術会議のあり方」も問いだす

というように、

「政府が十分に説明していない」と言っておきながら、その政府の言い分を勝手に補って代弁する

形になっている。[上記2020/10/6読売新聞社説からの個人的なまとめ](個人の感想です)

「政府が十分に説明していない」のに、読売社説が政府を代弁するかのような理屈を並べることができる理由はよくわからない。考えられるのは、権力への追従・忖度か、「十分に説明していない」はずの政府から(裏で)説明を受けたか、で、私にはそれ以外の理由は思いつかなかった。

そして、たまたまなのか、読売新聞は今回の社説を書く前日に、「菅首相へのインタビュー」と称するものを行っている。

他紙より3日遅れで速報性に欠ける上に、たっぷり時間があったはずなのに内容的にもよくわからないものになっていて(個人の感想です)、タイミング的に外部と何かを調整したような疑いをもたれる(個人の感想です)、読売新聞社説はすごい。

「学問の自由」と「報道の自由」

今回の読売社説で、私が「いつもの外部との調整」を、いつも以上により大きく疑ったのは、「学問の自由」に対する読売社説の無理解である。

社説では、野党が「学問の自由を脅かす重大な事態だ」と追及する方針であるとし、それに対する読売社説の主張は、

6人は自由な学問や研究の機会を奪われたわけではなく、野党の指摘は的外れだろう。

読売新聞2020年10月6日朝刊、大阪本社版、13S総合3面。

という、「学問の自由」を完全に理解していないものだった。

なぜ憲法に「学問の自由」が明記されているのか。

「思想及び良心の自由」だけでなく、「学問の自由」が憲法に明記されているのはなぜなのか。

「学問の自由は、これを保障する」という条文が示す、「保障する」のは誰なのか。

これを「的外れだろう」と、新聞社が社説で述べる神経を疑わざるを得ない。

憲法には明記されていないが、「報道の自由」も、民主主義国家においては、欠くことのできないものであり、最大限尊重されなければならないものである。

その「報道の自由」の意味を身をもって体現すべき新聞社が、「学問の自由」について「的外れだろう」と述べてしまうことは、許しがたいことであり、だからこそ今回の社説による主張を、報道人としての意見表明ではなく、「外部との調整」によるものだと、疑うこととなった。(ただ、これすら、好意的な解釈かもしれない。もし仮に、読売が「外部との調整なんかない、これが報道としての読売新聞の意見だ」と無邪気に言ってしまうことの方が、よっぽど恐ろしいが。)

補足)
今回の「日本学術会議任命拒否」による「学問の自由」への侵害を、「報道の自由」の場合で類似したものを探すとすれば、「報道側のクラブ等が設定した政府記者会見での記者の出席メンバーについて、官邸側が事前に介入する」という形が思いついた。このケースでのここ数年の現状を考慮すると、すでに一部の読売新聞などの報道人は、「報道の自由」など自ら理解を放棄しているとも見えなくもない。

「報道の自由」という大切なものがあるのに、「学問の自由」に対して無理解な読売新聞はすごい。

今回の読売社説は、

・主要な他紙より3日遅れ
・菅首相インタビューの後の掲載
・「政府が十分に説明していない」のに社説自ら説明
・「学問の自由を脅かす」という指摘を的外れと主張

といった、盛りだくさんな内容だった。

内容だけでなく、掲載タイミングなどで、こんなに、いろいろと考察と心配と不安をかけさせる、読売新聞社説は、やっぱりすごい。


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