「森友問題」値引きストーリー考案者の考察(後半)―主導者の考察

架空小説「仮名手本森友学園」

「森友問題」値引きストーリー考案者の考察(前半)では、「値引きストーリー」の用語の説明、時系列整理、問題のポイントを説明してきた。(後半)となるこの記事では、(前半)の整理を踏まえた上で、いまだ謎に包まれている「値引きストーリー」の主導者について、考察を加えたい。

[公開:2018/05/03、更新:2018/05/12]

(前半記事)の章タイトル
1.「値引きストーリー」とは
2.「値引きストーリー」の時系列の整理
3.「値引きストーリー」の理解のポイントは?
以下(後半記事)

4.「値引きストーリー」の主導者は誰?

では、値引きストーリーを考え、主導したのは誰なのだろうか。実はこの点が不明のままなのである。

当初、私は、「学園側顧問弁護士が青写真を描いた」と考えていた。

この顧問弁護士は

  • 2015年の打合せ記録に関わっていない
  • 学園へはN道組からの紹介(N道組から2015年の打合せの情報を知りえる立場の可能性)
  • 籠池氏が2016/03/15に本省へ訪問した際に持っていた打合せ記録には顧問弁護士の指示とみられる書き込みがあったと推定される
  • 建築に支障のないゴミについての訴訟に詳しいとの話

といった情報があったため、この顧問弁護士がストーリーの発案者の可能性が高いと、思っていた。

だが、今年に入って、共産党議員が2016/03/16の音声データを公開し、さらに詳しい解説があり、そこで、国土交通省大阪航空局の役人が、

「今回出てきた産業廃棄物は国の方に瑕疵があるということが、多分、多分というか判断されます」

というように、3/16の時点ですでに国側から提示していたことが分かった。

IWJ、”「安倍夫人」の名前で恫喝する籠池夫妻とひれ伏す官僚――マスコミでは伝えられない4時間もの「録音データ」を生々しい音声つきで公開! 岩上安身が共産党・辰巳孝太郎参院議員に訊く 2018.2.7”、記事公開日:2018.2.8取材地:東京都。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/411646
(サポート会員限定記事)(参照2018-05-01)

そのため、「学園側顧問弁護士が青写真を描いた」とする顧問弁護士説を再考する必要にかられたのが、2018/02/17時点の私の考察だった。

「森友問題」音声データがすべて出てきて分かったこと(2018/02/17)

その後、決裁文書が改ざんされていたことが明らかになり、さらなる情報が追加されたことにより、値引きストーリーの主導者が国側の可能性が高くなった。
(一方でそれとともに、関テレ「報道ランナー」の情報源が顧問弁護士だったという説の可能性が補強された。)

5.大阪航空局が主導者?

ただ、問題は、国側の、誰が主導者だったか、という点だ。

一見すると、残っていた書類・音声データ等、ほぼすべての記録が、国土交通省大阪航空局が提案していると指し示している。

その例を挙げる。

改ざん文書の前後表が公表されたが、なぜか報告が1週間遅れて公開された削除文書があった。

その文書は、「(決裁参考メモ)森友学園事案に係る今後の対応方針について(H28.4.4)」で、内容は、

「大阪航空局からの提案を受け入れ5月末を目途に土地の評価額から廃棄物処理費用を減額した価格提示を行い売却を行う方針」

と書かれてあった。

毎日新聞、”森友改ざん 削除文書、新たに1枚 財務省、価格交渉示唆”、2018年3月19日 12時39分(最終更新 3月19日 12時39分)。
https://mainichi.jp/articles/20180319/k00/00e/010/229000c
(参照2018-05-02)

財務省ホームページ、トップページ > 広報・報道 > 大臣談話・ステートメント > 大臣談話・スピーチ>決裁文書に関する調査について、”平成30年3月19日付け資料(PDF:263KB)”。
https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/201803D.PDF
(参照2018-05-02)

また、上で示した音声データでも、3/16の時点で大阪航空局の役人が、「ストーリー」の内容を提示していることが明らかになっており、さらに、3/30の業者メモでも、「航空局・財務局→彼らのストーリー」と、航空局の名前が財務局より先に書かれていた。

これらの書類と音声データを見れば、大阪航空局が主導しているように見える。

ところが、大阪航空局が主導者と主張する人はほとんどいない。というのも、大阪航空局は、この「ストーリー」の一味ではあるが、主導する立場というには動機が弱すぎるからだ。

上で示した、3/16の音声データでも、大阪航空局の役人が「国の方に瑕疵がある」と切り出しているが、その前に、近畿財務局の役人が「本省からの指示」に言及しており、役割を割り振った疑いがぬぐえない。

さらに、大阪航空局は、「ストーリー」ではゴミの積算をする役割を割り振られ、いったん積算したが、その金額が低いとして財務省に増量を依頼され、再び増量したということも判明している。

朝日新聞DIGITAL、”森友ごみ積算、近畿財務局が増量依頼 航空局に数億円分”、2018年4月12日05時02分。
https://www.asahi.com/articles/ASL4C661GL4CUTIL06P.html
(参照2018-05-02、有料会員限定記事)

「森友問題」で今日分かったことのまとめと考察(2018/04/12)

以上のような経緯のほか、財務省の改ざん文書の件でも、国土交通省は報道された後に、異なっている事を官邸に報告している点から見ても、主導者というよりも、逃げられないとわかったら、罪をいかに軽くするかという、行動をとっていることがうかがえる。これは、主導者の行動とはいいがたい。

6.財務省本省の指示?

そうなると、必然的に財務省が主導者である可能性が高くなるが、さらに言うと、近畿財務局と本省理財局のどちらが主導者だったのか、という疑問が残る。

この点については

  • 2016/03/15の「籠池氏本省への訪問」の翌日03/16にストーリーが動き出している
  • 削除文書2016/04/04付の「(決裁参考メモ)」に「本省審理室指示事項」が項目に入っている

といったところから、本省理財局が主導者であった可能性が高いと想定される。

ただ、ここでさらに疑問なのは、3/15の籠池氏が訪問した翌日の3/16にストーリーを提示できることが、時間的に可能なのか、ということだ。

3/15の籠池氏の本省訪問後に、本省がストーリーをすぐに考案して、翌日に近畿財務局に指示することは、何の準備もなく行えるとは考えにくい。

そうなると、それよりずっと前から、財務省本省で、「値引きストーリー」のひな型を作成済みだった可能性がある。

それをうかがわせるのが、夫人付きの職員が財務省本省に問い合わせた時期と、その直後に、賃貸契約後の売払いについて法律相談をしていた事実である。

この2016年12月の法律相談文書については、回答文書がこの1件だけ公開が遅れたといういわくつきの文書である。(「(回答の方が)公開請求の期間に含まれていなかったため」という理由で)。

さらに公開された経緯も、担当課だけを調べていたが、他の課にもあることに「気がつかなかった」という言い訳だった。しかも、調査対象は近畿財務局に限られ、本省については触れていない不自然さは、以前、当ブログでも触れた。

(番外編)時系列の要点整理と考察(その3)

これらの状況から、

「値下げストーリー」は、夫人付き職員の問い合わせをきっかけに本省理財局で賃貸後の売払いで値下げする手法を検討済みで、籠池氏の訪問してきた際にその枠組みを使うことを近畿財務局・大阪航空局に提示した

という仮定をたてられる。

この点については、まだ、情報が少なすぎるので、仮定としか言えない。

さらなる情報に期待したい。

[2019/04/21追記:ストーリーの件については、この問題に取り組んでられる大学教授・弁護士らのメンバーである、阪口徳雄弁護士がブログで、かなり早い段階で指摘していたことが、後日分かった。

弁護士阪口徳雄の自由発言(2)、”国が森友学園に異常に低額譲渡した理由がだんだん見えてきた”、2018年01月27日。http://blog.livedoor.jp/abc5def6/archives/1069808722.html(参照2019-04-21)。

自らの勉強不足を恥じるとともに、阪口氏が早い段階で指摘していたことを記すために追記しておく。]

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