検察庁法改正見送り報道でも読売新聞はやっぱりすごい

2020年5月18日(月)読売新聞朝刊の一面トップは、

検察庁法案 見送り検討

読売新聞、”同”、2020年5月18日朝刊。大阪本社版13S1面。

だった。独自ニュースだったらしい。

実際に、5/19の時点では、採決が見送られたので、結果的に、読売新聞の報道は確かだったと、現時点では言えるだろう。

ただ、読売新聞を熟読している私とすれば、その記事の横についていた社会部長による記名記事や、その後に出て来た社説や編集手帳などの、読売記者による意見表明に注目せざるを得ない。

報道よりも、どのように記事を書いたのかが気になってしまう読売新聞はやっぱりすごい。

※ 当記事の内容は、配達された読売新聞(大阪本社版13S)を読んだときの感想と、その後、読売新聞オンラインでの紙面ビューアーを閲覧しての確認と、両方によるものです。

「見送り検討」報道前の読売新聞

今国会での検察庁法改正については、2020年1月31日の黒川検事長の定年延長の閣議決定に違法の疑いがあり、政府の説明もウソにウソを塗り重ねる様なものであったため、当初から問題になっていた。

その定年延長を追認するかのような検察庁法改正案が、国家公務員法改正案と一括して衆議院の審議入りすると、SNS等で著名人も含めて抗議表明が相次ぎ、話題となっていった。与党は5月15日(金)の委員会採決を目指していたが、当日は、採決されず、散会となっていた。

そして土日を挟んでの月曜日朝の読売朝刊に「見送り検討」報道が一面トップに出た。

経緯は以上の通りで、この問題は、早くは、今年の1月末から、そして大型連休明けの週末にはtwitter等での抗議表明が話題となっていた。

読売新聞はというと、この件を、それまでに、積極的に報じようとした印象は無い。(個人の感想です)。少なくとも社説で主要テーマとして取り上げた記憶はなかったし(国会議論の一つとして数行だけ取り上げていることはあったが)、最近では、夕刊のよみうり寸評で、(記者としての意見は表明せずに逃げ道を確保したかのように)引用を重ねて取り上げていた記憶があったぐらいだ。

基本的には、記事にするとしても「野党が反発している」といった感じで、読売新聞としての意見表明せずに、この件を報道しているように思えた。(個人の感想です)

「見送り検討」報道での社会部長の記名記事

そんな中、月曜日にいきなり一面トップで、「見送り検討」報道が出た。

「検討」という表現であり、「検討の結果、違いました」と言い逃れることができるので、正直、半信半疑だった。そもそも、これまで読売ではそれほど大きく取り上げてこなかったのに、「見直し検討」を一面トップで大きく取り上げることには、違和感があったが、この、

これまで積極的に取り上げてこなかったくせに、政府が方針転換すると大々的に報道する

というスタイルは、モリカケや桜を見る会で、読売ではおなじみとも言えるので(個人の感想です)、特に驚きはなかった。

「検討」ということで、いつものように話半分に受け取ったが、その記事の横に、社会部部長による記名記事が、次のタイトルで載っていたことには、興味が引かれた。

検察の独立性 守れるか

同上、東京本社社会部部長 恒次徹、”同上”、2020年5月18日朝刊。大阪本社版13S1面。

社会部部長と言えば、読売は、あの「出会い系バー」報道で批判を浴びたときも、弁明かどうかもよくわからない記名記事を社会部長名で出していた。(ただ、当時と名前が変わっているので、今回とは違う人のようだ。)[当ブログ記事”読売新聞「出会い系バー報道」のここがすごい!”参照]

そして、なぜ今回の記名記事を書いたのが社会部なのかは、よくわからない。もちろん、事件回り等で社会部が検察担当であるような気もするし、読売は以前、社会面で、公証人ポストとヤメ検の関係について特集記事を組んでいたので、無関係ではないし、それだけの知見は持っているだろう。あるいは、出会い系バー報道の時と同様、社会部が言い訳要員として使われているだけかもしれない。

ただ、今回のニュースは、「見送る案が、政府・与党内で浮上」(同上)と記事にある通り、政府・与党の方針転換によるものであり、当然のことながら、このニュースは政治部が取ってきたものだろう。

まさに、政治部案件であるのに、実際には、その記事の横に、解説をするかのように記名記事を書いたのは社会部部長だった。

そのせいか、内容的には、良くも悪くも、当たり前のことしか書いていない。(個人の感想です)。良い意味では、今回の改正点の問題点を上手くまとめて指摘しているが、悪い意味では、懸念を示すだけで、明確な反対をしていない。そのため、主張として弱く、何が言いたいのかわからないものになっている。(個人の感想です)

読者からすれば、このスクープを取った裏側も聞きたいのに、せっかくの記名記事には何も書いていない。完全な肩透かしだ。もっとも、部違いの社会部記者に、今回の政治部(と思われる)スクープの裏側が書けるとは思わないし、そもそも、このスクープ自体に「ウラ」など存在しなかった可能性もあるが(つまり取材の結果ではなく直接教えてもらったというオチも)。

今回の記名記事で、特によくわからなかったのは、

将来の政権が、検察を人事を通して操ろうという誘惑に駆られないだろうか。不安は尽きない。

同上。

という部分だ。おそらく、読売新聞を熟読する読者であれば、「将来の政権の前に、今の政権に不安を持てよ」とツッコんでいただろう。

それはさておき、一面に記事の横に、記者の記名記事を載せるときは、何らかの言い訳があるように見えるときがある。まるで、

「事実としての記事ではなく、読売新聞本社全体としての意見でもなく、記者個人の見解です」

のように、何かを気にして記事を出しているに見えてしまうのだ。(個人の感想です)

今回の記名記事がそうだったかどうかは別として、将来の読売新聞が、記名記事を通して「個人の見解です」的な言い訳で逃げるという誘惑に駆られないだろうか。不安は尽きない。とかなんとか。

せっかくのスクープ記事なのに、場違いのような記名記事を載せる、読売新聞はやっぱりすごい。

[2020/05/20追記と訂正:社会部部長による記名記事の謎について、以上のように長々と語ってきたものの、明日発売予定の文春記事によれば、黒川氏が新聞社の社会部記者らと賭けマージャンをしていたという疑惑があるということがわかった。

黒川弘務東京高検検事長 ステイホーム週間中に記者宅で“3密”「接待賭けマージャン」

週刊文春、「週刊文春」編集部、”同上”、2020年5月28日号。https://bunshun.jp/articles/-/37926(参照2020-05-20)

記事には、産経新聞社会部記者と朝日新聞元検察担当記者が黒川氏と賭けマージャンをしていたということで、関係者によれば、昔から複数のメディアと賭けマージャンをしていたということだ。読売新聞の名前は出ていないものの、社会部と黒川氏とのつながりがあったことをうかがわせる内容だ。その意味では、当ブログ記事で指摘した、「社会部部長による記名記事」は謎でも何でもなかったことになる。ただ、そうだとすれば、社会部が弁明すべきことは月曜日の記名記事では全く語られていないので、読売新聞は再度、社会部部長による記名記事を書く必要があるだろう。以上追記]

[2020/05/22再追記:本日の読売新聞朝刊の社会面(大阪本社版13S、社会面29面)には、黒川氏の辞職記事と共に社会部次長による解説記事が。記名記事では、上記で求めた弁明が聞けるかと思っていたが、指弾するのは「法務・検察組織」に対してのみ。「責任は重い」「改めて自覚すべきだ」と威勢のいいことを言っているが、その対象は「法務・検察組織」。政権側については「人事に介入したとの見方がある」と、他人事のような記述。この期に及んで、政権側の責任を問わずに法務・検察組織の責任を記名記事で追及する読売新聞はやっぱりすごい。またその隣の関連記事では、黒川氏と賭けマージャンをしていたとされる、産経新聞社の記者と朝日新聞社の社員に対するそれぞれの新聞社の発表記事が載っていた。文春記事では、昔から複数のメディアの記者と賭けマージャンをしていたとのことで、読売新聞の記者も関係がなかったのか疑われているのに、読売記事ではその弁明も無し。自社のことは触れずに、法務・検察組織を記名記事で指弾する読売新聞はやっぱりすごい。]

[2020/05/24再々追記:23日(土)の読売新聞の一面・二面に「検証・黒川氏辞職」の無記名記事があり、月曜日の独自記事の出所のヒントがあった。この考察については、当ブログ記事”今日も読売新聞はやっぱりすごい(2020年上半期)”の「2020/05/23(土)朝刊一面・二面」を参照]

「見送り検討」報道の翌日の読売新聞

「見送り検討」報道があった翌日、2020年5月20日(火)の読売新聞では、ようやく、編集手帳(1面)と社説(3面)で、この件を取り上げていた。

ただ涼しい季節が来ても、世論は冷えてはいまい。

読売新聞、”編集手帳”、2020年5月20日(火)朝刊。大阪本社版13S,1面。

特例規定は削除すべきではないか。

読売新聞、”社説”、2020年5月20日(火)朝刊。大阪本社版13S,3面。

などのように、編集手帳も社説も、きわめてまっとうな意見で、改正案を批判している。堂々たるものだ。ただ、あと一日早く出していれば、との前提付きだが。

昨日の今日なので、そんなことを書かれても、読者は冷めている。とかなんとか。

まるで、見送りが決まったから書けるようになった、というようなタイミングなので、「さっきまで『王様は立派な服を着ている』って言ってたよね」とイヤミの一つも言いたくもなる。(個人の感想です)。

こんなことを思い起こさせる、読売新聞の「検察庁法改正見送り検討」報道は、やっぱりすごい、と言えるかのかどうか、世論は冷えてはいまい。とかなんとか。


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